天龍源一郎がレジェンドレスラーについて語る!ミスタープロレス交龍録 第43回「永田裕志」
永田はアマレスをやっていたっていうのもあるだろうけど、最初から物怖じしなかった。主従関係が煩わしいプロの社会と自分がいたアマチュアの隔たりを微塵も感じさせなかったね。「プロレスって、こういうものだから」って自分で納得しながら試合をしていた印象があるね。順応性があるっていうのが永田の特質だよ。いろいろな技を知っていても、それをことさら、ひけらかすこともないっていうのが永田のいいところだと思うよ。
考えてみれば、新日本で面倒臭い奴が出てきた時には、必ず永田が行かされていた印象があるよ。何でもこなせるからUインターとの対抗戦とか、フリーになってWJから出戻ってきた佐々木健介と東京ドームでやったりしてるもんね。言葉としては悪いかもしれないけど、便利に使われていたっていう部分がないでもないよ。何でもこなせて順応できるんだけど、新日本の選手特有の「俺が!」っていう我の強さは感じなかった。だから誰が相手でも7-3とか8-2とかの圧倒的な感じではなく、僅差の戦いをする永田は、新日本にとって重宝、便利だったかもしれないね。
同じ第三世代と言われる中西(学)、天山(広吉)、小島(聡)と比べたら、永田は確かに巧かったよ。昔のアメリカ・マットで言うならダニー・ホッジだね。それくらい図抜けて、臨機応変にその場をかいくぐって、しっかりレスリングを披露するのが永田っていう感じかな。あとの第三世代の選手たちは、どこかで自分を出そうとか、試合の中で躊躇があったり、止まる時があったけど、永田はずっと転がっていくような試合を見せていたよ。試合がギクシャクするところがないから、うまく使われたっていう印象が無きにしもあらずなんだよ。
だから究極のトップには推されなかったのかなとも思うよ。器用にやり過ぎて、特徴がないように見えちゃうんだよね。何かあると「永田!」って指名されるけど、それを難なく、ソツなくこなしちゃうから、観ていてインパクトに欠けていたよね。