『砂まみれの名将 野村克也の1140日』著者・加藤弘士氏「勝手な使命感が」
ブブカがゲキ推しする“読んでほしい本”、その著者にインタビューする当企画。第43回は、『砂まみれの名将 野村克也の1140日』の著者である加藤弘士氏が登場。沙知代夫人の脱税スキャンダルにより阪神タイガース監督を辞任。そして、翌年、社会人野球「シダックス」のGM兼監督に就任した名将・野村克也。砂まみれの時代があったからこそ、野村克也は再生した――。埋もれかけていた3年間を掘り起こした、その真意を聞いた。
「砂まみれ」の意味
――「スポーツ報知」のアマチュア野球担当記者として、シダックス時代の三年間を追い続けた加藤さんにしか書けない名著でした。人間・野村克也の姿が、浮かび上がってきます。
加藤弘士 野村さんのWikipediaを見ると、シダックス時代って一瞬で終わっちゃうくらい短い記述しかない。当時、3年間番記者を担当したのが自分だけだったこともあって、自分が書き残さないと、歴史の闇に埋もれてしまうのではないか……、俺が書かずに誰が書くんだ! という勝手な使命感がありました(笑)。ただ、プロ野球や高校野球と比べると、社会人野球はあまり陽の当たる存在ではないので、書いたとしてもどれくらい世間に受け入れられるのかという心配もあったんですよね。ですから、今、たくさんの方に読んでいただいて、ご感想をいただいてるのはすごく嬉しいです。野村監督自身、シダックス時代を振り返るときって、一言二言で終わっちゃうんですよ。「あのときは、(シダックス会長である)志太勤さんにお世話になった。その感謝を俺は一生忘れない」とか。それだけで終わらせちゃっていいのかなと感じていました。今回、本を書き下ろすにあたって、当時の関係者20人以上にお話を聞き、その証言をまとめたんですけど、皆さんの中で、まだ野村克也は生きているんですよね。野村さんはもう亡くなってしまったけど、証言が生きているからこそ、あの3年間が立体的に浮かんできたところがあると思います。
――この世を去っているなど、すでに当事者のいないノンフィクションって、本人の後年の証言がないだけに、ややもすると物足りない読み物になることも珍しくない。ですが、本作は、それがまったく気にならないです。むしろ、「人を遺(のこ)す」ことをモットーにしていた野村さんの哲学や生き様が、遺された関係者によって語られるからこそ重みがあるというか。
加藤弘士 傍証をまとめていくうちに、できることなら改めて野村監督に取材したいという思いもあったのですが、そう言っていただけるのはうれしいです。少年野球でも使われるような砂埃が舞う「関東村」と呼ばれるグラウンドで、僕も番記者として一緒に砂まみれになってGATSBYで顔を拭いていました(笑)。自分にしか書けないものを書くことができたという意味では、野村監督も喜んでくれているのではないかと思いたいです。
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