プロ野球・ペナント前半振り返り豪速球座談会…千葉ロッテマリーンズ佐々木朗希“完全試合”ほか
――生田さんは朗希フィーバーを最も近くで感じていると思います。スポーツ記者の人たちの反応ってどうなんでしょうか?
生田 佐々木朗希が投げる日は一面を空けて待ってるっていう感じですよ。あの試合以降、佐々木朗希が投げる日は他の5球場は全て裏番組になってしまうというか、それぐらいのインパクトがありました。だって完全試合ですら、槙原(寛己)さん以来28年間なかったことなのに、1試合で完結したはずの物語が、その次の試合でまた完全試合継続のままマウンドを降りるとか、さらに次の週には球審・白井がフィーチャーされるというようなことが起きて。松川もそうだけど、佐々木朗希に絡む人々がみんなスターになってしまうような熱気。放射される熱量がちょっと尋常じゃないですよ。物語が勝手に生まれてしまうということに関しては、松坂がそうだったし、今なら大谷翔平もそうですけど、古くは長嶋さんとか王(貞治)さんクラスのスターなんじゃないですかね。
伊賀 早く見てぇなあ。
生田 ロッテは過去を見ても、選手を引き止める気ゼロじゃないですか。だから、日本の球場で電車に乗って佐々木朗希を観に行ける期間のカウントダウンはもう始まっちゃってる気がします。
中溝 そう言えば、このまえ球場でファンが「がんばれ!白井」っていうボードを掲げてました。最近、白井が塁審をやっただけでニュースになるじゃないですか。もうわけわかんない状況。完全に野球界が佐々木朗希を中心に回ってる。
生田 あの騒動もパワハラ的な極めて現代的な問題をはらんでいるので、一般層の人が語りやすいところに落とし込まれて、すごくワイドショーで扱いやすいネタでしたよね。
伊賀 中溝さんが野球先生として出た『アフター6ジャンクション』も、佐々木朗希が完全試合をやってからしょっちゅうオープニングトークで朗希の話をしてましたからね。野球中継の枠を潰して作った番組なのに(笑)。
中溝 ダッハハハハ!
伊賀 宇多丸さんが白井の話までしてました。『アトロク』で雑談として野球の話が出るって、すごいこと。あと、佐々木朗希つながりの話でしたいなと思ってたのが、「160キロ超え当たり前問題」。昨日も千賀(滉大)が164キロ投げてたけど、佐々木朗希がすごすぎて、新聞で3段ぐらいしかニュースになってなかった。
中溝 たまに菅野(智之)を見るとすげえクラシカルな匂いがします。
伊賀 するする(笑)。菅野はもうノリが昭和っすよね。
中溝 なんか懐かしい感じ(笑)。
伊賀 この超投高打低、何なんですかね?
中溝 藤川球児がスポーツ報知の裏一面で「マウンドがめっちゃ固くなっている」というのを理由に挙げてましたね。昔の日本のマウンドは柔らかくて踏ん張りが利かないから、すごい重心低く投げてたけど、今の若い投手は昔で言う「手投げ」みたいな感じでもパッと投げられちゃうって話でした。
生田 一方で出力がひと昔前と比べて上がってる分、フィジカルがついていかずに怪我が増えていくのかなっていう問題もありますよね。金田(正一)さんが金田棒を持って健康に気を使ってる頃と今はもう全然違うじゃないですか。
中溝 アスリート化しすぎというか、ちょっとパンクラスっぽい。
伊賀 ベルトの上に肉が乗ってこない感じっすもんね(笑)。
中溝 ここにきて、急に時代が令和になった感じがあるんですよ。
伊賀 パラダイムシフト感はありますよね。去年の奥川(恭伸)も中10日だったし、堀田(賢慎)とか巨人のピッチャーも、中6日ローテじゃなくてもっと大事に使われてる。
生田 新しい野球界の常識を佐々木朗希が作っていくんですよ。
伊賀 そうそう。佐々木朗希以前・以後みたいな。
中溝 大谷・朗希でそのラインが完成しちゃいましたよね。松坂みたいに1年目の4月から160球ぐらい投げるピッチャーはもう見られないかも。
生田 令和の象徴、新しい時代の新しいスターなのかなって。「エースたるもの、マウンドに上がったからには投げ抜くものだ」という文脈と全然違う。
伊賀 これが10年ぐらい経ったら、1週間に50球しか投げないけど、170キロ投げるっていうピッチャーが出てくるかもしれない。
中溝 朗希の出現でいよいよ沢村賞の基準を変えるかもしれないです。
生田 「先発完投型の投手に贈られる賞」っていう概念自体が本当に古くなってしまうでしょうね。
伊賀 まぁ、昔も似たようなことはあったんでしょうね。俺たちは長い昭和の中でのひとつの世代でしかないけど、それこそ稲尾(和久)が日本シリーズで4連投してた時代もあったわけだから。