当時の記者席も似たようなものだ。インターネットもない密室でタバコを吸いまくり、充満する煙で視界が遮られる。95年の年明け、契約更改のため神田の巨人球団事務所に着いた桑田真澄はプレスルームに入るなり、「こんなにタバコを吸っちゃって……。頭悪くなっちゃいますよ」と先制パンチ。「僕が会見する30分前には皆さん禁煙してくださいよ。少しでも煙があったら会見はしませんから。こう見えても僕は虚弱体質なんですから」なんて1秒も笑えないマスミギャグを炸裂させ、交渉のため別室へ。前年日本一とシーズンMVPを盾に年俸2億円の攻防になると思われたが、あっさり1億4300万円で手を打ち、東京ドームのロッカールーム禁煙検討と遠征時の新幹線や宿泊先で分煙化を認めさせた。これには同僚の大久保博元が『週刊宝石』誌上で「吸う人には吸わない人には分からない生活のテンポがある。10人中9人が吸わないのなら分かるけど、困るよ」と反論。さらにドンナベツネさんも「オレは反対だな。オレは“ニコチン種族”だから」なんてアンチ嫌煙派を公言した。