天龍源一郎がレジェンドレスラーについて語る!ミスタープロレス交龍録 第41回「鈴木みのる」
天龍源一郎は、その40 年間の“腹いっぱいのプロレス人生”で様々な名レスラーと出会い、闘い、交流した。ジャイアント馬場とアントニオ猪木の2人にピンフォールでの勝利を収めた唯一の日本人レスラーであり、ミスタープロレスとまで称された天龍。そんな天龍だからこそ語れるレジェンドレスラーたちとの濃厚エピソードを大公開しよう!
鈴木みのるに聞いたら、初めて会ったのは88年1月4日のプロレス大賞授賞式だったらしいよ。「おっ、鈴木みのる! お前、週刊誌で見たことあるよ。生意気なんだってな」って、俺に言われて「何だ、このオヤジ!」って思ったらしいけどね(苦笑)。多分、週刊プロレスとか週刊ゴングで写真を見て、顔は知ってたんだと思うよ。若いあんちゃんだからそういう言い方をしたのかもしれない。あとは当時のみのるは新日本プロレスの新人で会場の隅で小さくなっていたから、声を掛けたのかもしれないね。
その次に会ったのは、親会社のメガネスーパーの田中八郎社長が「みんなが仲良くなれるように」って、赤坂の『コルドンブルー』で設けてくれた91年のSWSと藤原組の親睦会。藤原(喜明)さんは前々から知っているから、特に船木誠勝とかの藤原組の若い奴とコミュニケーションを取ろうと思ったんだけど、みのるは「明日、練習がありますから」って、俺の酒を断ったんだよ。「俺の酒とどっちが大事なんだよ?」って言ったら「練習です」って言うから「もういい、帰れ!」って(苦笑)。同じメガネスーパー傘下でも、全日本プロレスのような一体感がなくて、みんなバラバラなんだなっていう認識を強くしたよ。多分、若いみのるにしたら、SWSに対して仲間意識じゃなくて、敵愾心しかなかったんだろうね。その後も神戸(91年4月1日)のギクシャクした試合(アポロ菅原と不穏試合)があったよね。敵愾心しかないから、溶け込めないし、溶け込みたくなかったんだと思う。当時は、田中社長の意を汲んだ藤原さんから「こうこうだから」って自分の意思とは関係なしに行動させられていたから、納得できなかったんだろう。
あの時代の鈴木みのるはテンパってたよ。テンパっているのと同時に、そういう自分に自己陶酔していたよ。UWFから分かれた藤原組でもあったしね。
それから俺はWARを旗揚げして、みのるは藤原組を飛び出して船木とパンクラスを旗揚げして……俺は鈴木みのるのことを全然気にしてなかった。でも1回だけ気になったのはね、彼がパンクラスで行き詰まってプロレス界に戻ってくる時(03年6月)かな。雑誌にコメントを求められて「これで鈴木みのるも今まで鎧や兜を着て、常に格闘技を意識していたものが、すっきりとプロレスをやれるんじゃない?」っていうニュアンスで喋ったことを憶えてるんだよね。
で、2004年の新日本の1・4東京ドームで会ったんだ。当時は俺もフリーで、俺とみのる、佐々木健介、高山善廣のフリーの人間が同じ控室に押し込まれたんだよ。「またプロレスをやることになりました。若い時にはお世話になりました」って挨拶に来たんだけど、前に雑誌でコメントしてるから「ああ、よく戻ってきたな」って感じだったと思うよ。一度は格闘技系に行って、またプロレスに戻ってくると、外野が騒いで自分の気持ちに二の足を踏んじゃうんだけど、そこを乗り越えて、よくプロレスに戻ってきたなっていう気持ちが強かったよ。「プロレスに戻った裏切り者」って罵られたこともあっただろけど、そこでグッと踏み出した鈴木みのるに「よく、来たね」って。そんな思いだったよ。
取材・文/小佐野景浩
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天龍源一郎|1950年生まれ、福井県出身。1963年に大相撲入り。1976年のプロレス転向後は「天龍同盟」での軍団抗争や団体対抗戦で日本・海外のトップレスラーと激闘を繰り広げ、マット界に革命を起こし続ける。2015年の引退後もテレビなど各メディアで活躍中。
鈴木みのる|1968年、神奈川県生まれ。横浜高校時代にレスリング部に所属し国体2位の実績を引っ提げ1987年に新日本プロレスに入門。1988年飯塚孝之戦でデビュー。1989年4月に新日本プロレスを退団しUWFと契約。1991年にはUWFを退団して船木誠勝らと藤原組に参加。1993年には藤原組を退団し船木とともにパンクラスを旗揚げ。パンクラスでは、モーリス・スミス、ケン・シャムロック、バス・ルッテンらと総合格闘技で勝負を繰り広げる。2003年からは新日本のリングに参戦。2004年にはIWGPのベルトをかけて佐々木健介と対戦。また、同年IWGPタッグ王座を持ちパートナーの高山善廣と共にノアに参戦するなど活躍の場を広げる。その後は様々な団体の試合に参戦し、現在もプロレスラーとして奮闘し続けている。
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