天龍源一郎が語る風間ルミさん「『そうはいかない!』の負けん気があった」

娘の話はさておき、風間は男のプロレスと一緒に巡業したり、引退した後だって、神取が参議院議員になった時には公設秘書になって、政治の世界に足を踏み入れたたしさ、何かをやる時に二の足を踏まない度胸があったよ。「やってみてから考えればいいことだ」みたいなところがあったね。神楽坂にお店(豚菜キッチン 絆)も出したしね。その前の年(09年)の暮れにウチの店(鮨處しま田)を閉める時に「好きなのを持っていきな」って、食器をあげたのを憶えている。よく一本独鈷で清々しく生きてきたと思うよ。「誰かに媚売って……」なんていう話を聞いたこともないしね。チャンレンジする人生だったよね。
 
2012年だったのかな? 彼女の店で飲んだことがあった。確か三沢(光晴)の命日で、三沢を偲ぶ飲み会だったと思うよ。ダチョウ倶楽部の竜ちゃん(上島竜兵)も来ていたし、俺は(レイザーラモン)RGを呼んだはずだよ。でも仕事で接点がなくなってからは、段々と疎遠になっていったっていうのが正直なところだよ。むしろカンちゃん(神取忍)の方が会う機会が多いよ。風間とは彼女の店で飲んでから、会ってなかったかもしれない。ここ数年会っていなくても、人から風間がどうのこうのっていうのを聞いて「ああ、元気にしてるんだろうな」って思いながら、昔のレスラー仲間をちょっと気にかけながら過ごしていたっていうのが正直なところだよ。

あんなにバイタリティがあって、エネルギッシュで前向きに頑張っていた風間ルミだから、亡くなった時にみんなが「えっ?」ってなったんだと思うよ。だから俺も訃報を聞いた時は本当にびっくりした。何があっても結構乗り切って生きていくと思っていたからさ。

亡くなった翌日に神取から「明日、お別れができる時間があります」って連絡があって、朝一番で会いに行ったんだよ。棺に入った顔を見て「ああ、痩せたな」っていう感じはあったけど、でも、知っている時のままの顔だった。「苦労して、大変だったんだろうな」っていう顔ではなかったし、安らかな顔だったからよかったなと思ったよ。

シュート・ボクシングから始まって、あんなちいちゃな体で、いろんなことをやりながら人生を生き抜いたね。もがきながらなのか、楽しんでなのかはわからないけどね。言葉としたら「太く短く」になっちゃうけど、いろいろな経験をして、一生懸命、精いっぱい、休む暇もなく歩んだ人生だったと思うから、ゆっくり休んでほしいと思うね。

取材・文/小佐野景浩

天龍源一郎|1950年生まれ、福井県出身。1963年に大相撲入り。1976年のプロレス転向後は「天龍同盟」での軍団抗争や団体対抗戦で日本・海外のトップレスラーと激闘を繰り広げ、マット界に革命を起こし続ける。2015年の引退後もテレビなど各メディアで活躍中。

風間ルミ|1965年、東京都出身。高校生の時にキックボクシングを始め、シュートボクシングの活動などを経て1986年にジャパン女子プロレスに入団。同年デビューし、その容姿も併せてアイドル的人気を誇る。1992年にジャパン女子プロレスを脱退し、LLPWを設立。女子プロ界では世界初の代表取締役社長兼現役レスラーとなった。北斗晶との壮絶な髪切りマッチやWARとの興行などで、女子プロレス界を盛り上げる一翼を担った。2003年に神取忍に社長を譲り現役を引退。2006年には参議院議員に繰り上げ当選した神取忍の公設秘書を務めた。2021年9月永眠。

「BUBKA1月号」ミスタープロレス交龍録 第37回は「風間ルミ」
写真/平工幸雄

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