なんてったってキヨハラ第19回「逆襲のKK」
26歳、プロ9年目の開幕前に『週刊ベースボール』のインタビューに答えるキヨマーは「若手と石毛さん、辻さんの間に距離がありすぎるんで、その中間の役割ができればと思っています」とナチュラルに中間管理職宣言。前年ストーブリーグは師匠と慕う落合博満の巨人移籍などできたばかりのFA制度の話題で持ち切りだったが、「今はライオンズが好きだし、FAといわれてもピンとこないです。けど、心のどこかでセ・リーグの野球に興味があるというのも事実なんですよね」とか、「(西武に)ものすごく感謝しています。でもボクたちはビジネスとしてやっているわけですから、割り切った考えも必要とは思います」なんて彼氏と別れる直前のOLさんのような移籍匂わせ発言を連発。そろそろプロ生活も折り返しに来ているから、残り半分を大切にしたいんやと正月に実家近くで走り込み、90キロ前後のベスト体重をキープ。マウイ・キャンプでは「キヨがこんなに体を絞り込んできたのは初めて」と森監督を驚かせ、さらにはポケットマネーで報道陣全員にビールとジュースを差し入れた。
昨年は打撃不振と体調不良にイラ立ち、マスコミに「邪魔や、どけ!」と言い放った男の心変わりに、記者の中には「なんだか気味悪いな」なんて疑う声もあがるアダルトモードのキヨマーであった。近鉄との開幕戦では、野茂英雄に西武打線が8回までノーヒットに抑えられるも、9回の先頭打者としてトルネードの夢を砕く右翼オーバーの二塁打。伊東勤の逆転サヨナラ満塁弾のきっかけを作ると、「プロ野球が、サッカーに逆転サヨナラ満塁ホームランした感じやな」なんて鼻高々の背番号3。「サッカー選手を見てカッコイイと思ってサッカーを始める子が多いでしょう。でも中には、ボクらを見て野球をしたいと思う子どももいるんです」と妙にカテェ…じゃなくて球界全体を考え、真面目な顔をして“プロ野球代表”を演じるシーズンインだ。