大森靖子「道重さんがよりよくなっていくから好きになるしかなくて」~吉田豪インタビュー 証言モーヲタ
――ちなみに、地元・愛媛でのヲタ活動って具体的にできることはあったんですか?
大森 ないです。現場に行こうと思えばあやや(松浦亜弥)とか来たりするんですけど、松山はそんなに来ないんで。CDとブートのシールを買うとかぐらいしかなかったです(笑)。でも繰り返し聴く量とか想像力が現場行ってる人より強いと思うので、脳内補完みたいなのがはかどるかなと思います。自分が活動しても、地方のファンの人のほうがエグいとこまでイラスト描いてくるし。自分の年代はメンバーと歳が同じくらいなので。
――加護(亜依)ちゃんと同じ世代で。
大森 そうそう、なので学校の子もオーディションを受けてたんですよ。受けに行ける家庭と行けない家庭があるじゃないですか。広島まで行かないとオーディション受けられないから、受けに行っただけでもうアイドル扱いなんですよ、松山ぐらいになると(笑)。
――クラスでそれなりにかわいい子が。
大森 かわいいっていうよりイケてる子、ダンスやってます、って子が行ってましたね。
――自分はそっち側の人間じゃないという自覚は早い段階からあったみたいですよね。
大森 めちゃくちゃありました。「え、受けようと思えるんだ!?」みたいな気持ちでした。みんなグループを作って『黄色いお空でBOOM BOOM BOOM』とか踊ってましたね。『恋のダンスサイト』もダンス部がやってて、「あ、やっちゃえるんだ」みたいな、そのときから穿った目で見てました(笑)。誘われても、「いや、絶対やんない」って。
――それが上京してから変わったんですね。『BUBKA』系のイベントにも来てたっていう話を聞いたときはかなり衝撃でしたけど。
大森 ロフトプラスワンの杉作さんのイベントにも行って。『あいぼん祭り』(注3)かな? でもなんかある種、いまで言ったらホモソーシャルじゃないですけど、そういう美徳みたいなのをいいなーと思って観てました。自分も男だったらここに入れたのかなーとか。
――男の墓場プロダクション(注4)に憧れて。
大森 そう、いいなー、うらやましいなと思ってましたね、自分もこうなりたかったなって。だからずっとハゲたいと思ってました。それは自分の性別の話とかそういうのじゃなくて、オタクとして正解のルックスになりたかった。だから杉作さんカッコいいなって。
――オタクとして正解のルックス(笑)。
大森 カッコいい! あこがれですね。
『あいぼん祭り』(注3)……杉作J太郎が行っていたトークライブ。
男の墓場プロダクション(注4)……杉作J太郎が率いる映画制作チーム。現在は狼の墓場プロダクションに改名。