田原総一朗『堂々と老いる』疲れたっていいんですよ好きなことをしているんだから
『朝生』が生んだ熱気の理由
――もともと田原さんは小説家志望だったんですよね。それを厳しく突き放され、あきらめたと聞きます。
田原 小説を書いては新聞社、出版社に応募していました。でも、全部ダメ。箸にも棒にもかからない。あるとき、こう言われた。「文才のある人間が頑張るのは努力、ない人間が頑張るのは徒労だ」。僕は後者である、と。打ちのめされていると、石原慎太郎さんが『太陽の季節』を発表した。読んでみると、実弟・裕次郎さんのことを書いているから、すさまじいリアリティがあった。僕は彼女もいない、恋愛をしたこともないのに恋愛小説を書いていたから、比べてみるとまったくリアリティがないことに気が付いた。ショックだった。追い打ちをかけるように、数カ月後には大江健三郎さんが『飼育』を発表した。これを読んで、再び大きなショックを受けた。勝てるわけがない。それで作家はあきらめました。出発点が、コンプレックスから始まっているんです(笑)。そういった背景もあって、東京12チャンネルでは他局ができないようなものを作ってやろうと思った。フィクションは向いてない、だったらドキュメント。ジャーナリストとしてでしか生きる道がないとも思っていた。
――素朴な疑問なのですが、さすがに田原さんも疲れはしますよね?
田原 疲れたっていいんですよ。好きなことをしているんだから。「その歳で『朝生』をやるのは、体に良くないんじゃないですか?」とよく聞かれるんですけど、体に悪くてもいいじゃないかって。僕の理想は、『朝生』放送中に急に田原が静かになった――よく見たら死んでいた! こうなりたい(笑)。プロデューサーは、番組終了後にしてくださいって言うんだけど、僕は番組中にそうなりたい。