【BUBKA1月号】侍戦士と振り返る、80、90年代の豪快プロレス黄金時代…越中詩郎
熊本旅館破壊事件
――新日本とUWFの合同宴会で大変なことになった熊本の旅館ぶっ壊し事件(87年1月23日、熊本県水俣市)は、今になってあらためて検証されたりしてますけど、やっぱりすごいことになってましたか?
越中 俺はあの時、何人かの命を救ってるからね。
――そうなんですか!?(笑)
越中 (ドン)荒川さんと藤原(喜明)さんが、旅館の7階くらいで二人で言い合って、ここから飛び降りる、飛び降りないってやってるわけですよ。もうベロベロだから。藤原さんが「なんだ、飛び降りる勇気がないのか」とか言ったら、荒川さんも意地になって「いいよ。飛び降りてやるよ」とか言って、手すりを乗り越えようとしてるから、「何やってるんですか! ダメですよ!」って、俺が荒川さんの体にしがみついて止めたりしてね。
――大変ですねえ(笑)。
越中 かと思えば、後藤(達俊)は宴会場で三面鏡をぶん投げて、旅館に飾ってあった模擬刀を振り回しながら、「猪木はいねーのか! 猪木出てこい!」って叫んでて。そしたらたまたま猪木さんと坂口(征二)さんが広間の隅っこで飲んでて、猪木さんが「なんだ後藤。俺はここにいるよ」って言ったら、後藤が直立不動で「どうも! おつかれさまです!」って言って。「おまえ、酔っ払ってねえな、この野郎!」って、ぶん殴られたりね。
――各地で同時多発的に修羅場が現出してたわけですね(笑)。
越中 そうですよ。飲んでたら三面鏡が飛んでくるし、トイレのドアは引けば開くのに「開かねえぞ!」って押してぶっ壊したり。挙句の果てには、トイレのパイプを引っこ抜いて、水は吹き出してるしね。それを黙々と掃除してたのが藤波さんなんだから。
――さすがドラゴン(笑)。
越中 そんなめちゃくちゃな状況だからさ、最初に旅館に着いたときは女将さんとかみんながお出迎えしてくれたんですけど、帰りは泣いてましたよ。「旅館が壊れちゃった」って。